「コンサルの資料作成アドインといえば think-cell」——これは今も揺るがない定説です。ところが近年、その競合として比較検討の俎上に載るのが empower®(エンパワー)です。**結論から言えば、think-cell が「チャート作成の自動化」に一点特化したツールであるのに対し、empower は「スライドライブラリ・CI(コーポレートアイデンティティ)チェック・レイアウトツール」までを一体化した“資料作成の総合スイート”**であり、両者は競合しつつも守備範囲が異なります。本記事では、現役コンサル(具体企業名は伏せる)が、empower の全体像・主要機能・料金を整理し、think-cell との違いと選び方を解説します。

empower とは|ドイツ発「資料作成の総合スイート」

empower® は、ドイツの empower GmbH(旧 made in office)が開発する Microsoft 365 向けアドインです(empower® PowerPoint 公式)。PowerPoint だけでなく Word・Outlook にも対応し、「ブランドに準拠した資料を、少ない手間で量産する」ことを狙いに設計されています。

think-cell が「グラフを速く・きれいに作る」ことに集中しているのに対し、empower の思想は組織全体の資料品質を底上げすることにあります。個人の作業効率だけでなく、「会社のテンプレートや配色から外れたスライドを自動で検知・修正する」といった、ガバナンス寄りの機能を持つのが最大の特徴です。

empower の 3 大モジュール

empower の機能は、大きく 3 つの柱に整理できます。

STEP 01

Slides(スライド)|ライブラリとレイアウトツール

組織のスライドを一元管理するスライドライブラリが中核です。公式によれば数百〜1 万点規模のテンプレート/スライドを蓄積・再利用でき、常に最新版が全社員に共有されます(empower® Express 公式)。加えて 50 種類以上のレイアウトツールが、整列・配置・サイズ調整といった手作業を秒で片付けます。「作ったスライドを資産化して使い回す」という発想は、PPT のテンプレ化で作業時間を半減 の考え方をツールで実装したものと言えます。

STEP 02

Charts(チャート)|think-cell と真っ向勝負する領域

ウォーターフォール・Mekko(マリメッコ)・ガントなど、40 種類超のチャートを Excel 連携で自動生成します(empower® PowerPoint 公式)。ここが think-cell と最も直接的に競合する領域です。さらに empower は「他アドインのチャートをワンクリックで変換」する機能を打ち出しており、think-cell からの乗り換えを想定した設計になっています。

STEP 03

CI チェック(コーポレートデザイン準拠)|empower 独自の強み

empower 最大の差別化がコーポレートデザインチェックです。マスターテンプレート・配色・フォント・サイズが会社のガイドラインから外れていないかを PowerPoint 上で自動検査し、逸脱を修正します。ライブラリに素材を保存する際に自動チェックを走らせる運用も可能で、全社で「ブランドから外れた資料」を出さない仕組みを作れます。これは think-cell にはない領域です。

アジェンダ機能とレイアウト自動化

empower のスライド機能で現場受けが良いのがアジェンダウィザードです。章立てを登録すると目次スライドを自動生成し、以降に構成やページ番号を変更してもアジェンダ側が自動で追従します。長尺の提案書で「目次と本文がズレる」という定番の事故を防げるのは実務的な利点です。アジェンダ設計そのものの考え方は アジェンダスライドの作り方 に譲りますが、empower はその運用を自動化してくれる位置づけです。

empower vs think-cell 機能比較表

両者の守備範囲の違いを一覧で整理します。

比較軸empower®think-cell
主な思想資料作成の総合スイートチャート作成の自動化に特化
チャート40 種類超(ウォーターフォール・Mekko・ガント等)40 種類超(同上・自動レイアウトが強力)
スライドライブラリ◎ 数百〜1 万点規模を一元管理✕(対象外)
CI/ブランド統制◎ コーポレートデザインチェック✕(対象外)
レイアウトツール◎ 50 種類以上△ 整列補助は限定的
対応アプリPowerPoint・Word・OutlookPowerPoint・Excel
他アドイン変換◎ ワンクリックで取り込み
料金モデル月額サブスク(モジュール別)年額サブスク(ユーザー単位)

think-cell の真骨頂は、データを入れればラベルや矢印の位置まで自動で最適化するチャートの完成度です。一方 empower は、チャートは「40 種類対応」で押さえつつ、ライブラリと CI 統制で組織全体を巻き込む点に価値の重心があります。

料金の考え方(2026 年 7 月時点の公表情報)

料金は改定されるため、必ず公式で最新値を確認してください。ここでは公表情報に基づく目安を示します。

  • empower® Express(小規模チーム向け):月額課金で Lite = €9.99/ユーザー・月(チャート機能中心)、Full = €29.99/ユーザー・月(フルスイート)、Mac = €19.99/ユーザー・月。年額割引や 50 名以上のボリュームディスカウントもあり、大規模はエンタープライズ見積もりとなります(empower® Express 公式)。
  • think-cell:ユーザー単位の年額ライセンス。少人数(1〜4 名)で月あたり約 $26.90/ユーザー、50 名規模で約 $19.20/ユーザーが目安とされます(think-cell 注文ページ、日本語の料金解説は ITreview)。

どちらを選ぶべきか|用途と規模から逆算する

まとめ

empower は、think-cell の「チャート特化」に対して、スライドライブラリ・CI チェック・レイアウトツールを束ねた総合スイートとして競合するアドインです。両者は優劣ではなく守備範囲の違いで選ぶ——この一点を押さえれば、選定は驚くほどシンプルになります。

  • empower は 3 モジュール構成——Slides(ライブラリ・レイアウト)/Charts(40 種類超)/CI チェック
  • think-cell はチャート自動化の完成度が武器——少人数・個人のグラフ量産に強い
  • empower はブランド統制が武器——全社の資料品質を底上げしたい大企業向け
  • 価格はモジュール別——チャートだけなら価格差は小さく、Full 以上で empower の真価
  • 選定軸は「個人の時短か、組織の統制か」——用途と規模から逆算する

まず、自社(自チーム)が抱える課題が「グラフ作成の速度」なのか「資料品質のバラつき」なのかを 1 行で書き出してください。その答えが、think-cell か empower か、そしてどのプランを選ぶべきかを教えてくれます。

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参考文献